前回の続きです。
学校の入学時期を9月にすることが難しい理由のもうひとつは、単純に「まだ暑い」ということです。
9月だしそうでもないのでは? と思われるかもしれませんが、2020年は9月初頭にして新潟地方で摂氏40度を記録しており、もはや晩夏とはいえなくなってきています。
当たり前の話ですが、暑いとやる気が出ず、頑張れません。
もちろん「やる気が出る季節」などというものは存在しませんが、4月入学の場合、なんとなく頑張っているのをクラスメイトに冷やかされれば「うるせー、最初だけだよ、春だし別にいいだろ」で済み、冷やかした方も「そうか、まぁ俺も最初だけ頑張ってみるか、春だし」となるものです。つまり、気まぐれに出してみた優等生的な照れくさい向上心を、春の時候のせいにできるわけです。
しかし、9月には何もありません。あるのは夏が終わるという虚無、そして終わらない灼熱だけです。
なんとなく頑張ってみよう、という気持ちを、何のせいにすることもできません。ただ「暑い中頑張ってるエラい人」になってしまい、これではカッコがつきません。結果、9月の新入生は4月と比べ、頑張る雰囲気に恵まれないことが想像されます。
また、そもそもの話として、9月に入学式を開くということ自体、大変な危険を伴います。
前述の通り、運が悪ければ摂氏40度を超える9月の入学式。そんな中、長大な式次第を淡々とこなさせられる学生さんたちにとっては、文字通り、狂気の宴でしかありません。
そんな絶望感の漂う中、新入生に対して「ひまわりのように強くあれ」とか、「あさがおのようにさわやかな」とか、ましてや造花だのドライフラワーだのそんなフレーズが式辞で並べられようものなら、新入生一同が足下のスリッパを床に叩き付けて校長に一斉に襲いかかっていっても何ら不思議ではありません。
真面目な話、台風と豪雨が連続で襲いかかってくるような季節をスタートラインにして大丈夫なのか? とかいうようなごく普通な疑問もあるわけですが、とにかく余程他に方策がない、ということでなければ、日本の風土を考えた上では、やはり従来の4月入学がベターではないかと思うのです。