ウェブサイトを再開した暁にはどうしても書いておきたい、といった話題があったはず、しかしそれが何だったのかをとんと思い出せない――という状況のまま二ヶ月が経過していましたが、このたび思い出したので記しておきます。
 Wikipediaの項目、「トイレットペーパーの向き」についてです。

Toilet paper orientation over Toilet paper orientation under

 左が「表向き」、右が「裏向き」です。

 トイレットペーパーというのは、普通に汚い部位を拭く以外にも、床に水滴が落ちたのでちょっと拭くとか、突発的に出現した何かをつまんで屋外に追放するとか、そういうクイックな使い方を要求される紙でもあります。そのため、時と場合に応じた必要量を素早く的確に取り出せないといけません。床とかにそのままドカンと置いてはだめで、ホルダーに装着して使うべし、というのにはそういう必然性があります。

 また、トイレットペーパーは毎日使われるという性質もあって、我々の人生に寄り添い続けてくれる紙でもあります。学校のトイレに置いてある予備のそれがホースの水で溶解してぐちょぐちょになっていたり、報道がある度に開店前のドラッグストアに長蛇の列を成して買い占めを試みたり、拭いた後にチラ見したら自覚のない大量の出血でびっくりさせられたり、最終的には存在すら忘れてそのままトイレから出てきて知らない誰かに無理矢理拭かれたり等々、私たちの人生の悲喜こもごもと共にトイレットペーパーはあり、人間の至らなさ、罪深さ、愚かさ、脆弱さなどを教えてくれます。

 ほとんどの人類が、トイレットペーパーのありがたさを分かち合い、トイレットペーパーと共に生きている。
 なのに、ペーパーホルダーへの補充のしかたひとつで諍いは絶えない。
 まさに宗教論争のような話です。

 もっとも、こと日本においては、この議論はほぼ無意味です。
 というのも、向きも何も、そもそもホルダーに装着されロールの上に覆い被さっているカバーを簡易なカッターとして使い水平に綺麗にカットするという文化が一般的な日本においては、裏向きという概念自体が成立し得ません。
 あるとすれば、それは補充した人の単なるミステイクです。

 そんなわけで向きに関する話は終わりにして、この国においては表向きしか存在しないという前提で話を進めますが、皆さんはペーパーを千切る際、何も考えずに千切っていませんか?
 何も考えてなかった、という人は、今後は以下のようにするとよいでしょう。連続して取り出す場合に便利ですし、後に使う人に対しても親切、そして衛生的です。

1.ホルダーの蓋で、完全にはカットせず、端っこを五ミリ程度残してカットする
2.五ミリ程度つながったまま、十センチくらい引き出す
3.絶妙なひねりと力加減と勢いでもって、完全に千切る
4.汚れた手で触れることなく、次に手に取る部分が自動生成される

 全ての人がこの方法でペーパーを千切れば、次の人はペーパーの切れ目をいちいち探さず、すぐに使えます。
 しかも理論上、前の人の汚れがペーパーに付くこともありません。

 ただしこれだけでは、衛生面としては足りません。最大のポイントは、自分の出したものがバイオハザードの端緒になると強く思い込むことです。他の人が触れたら死ぬんだ、そういうものを私は今出しているんだ――そういう強い思い込みで実行することが大事です。

 何かを参照してこの手法を考案したわけではなく、私がオリジナルで編み出した技だと思っているので、もしこの手法が世界中に広まった場合、トイレにおける衛生の向上に大きく寄与したとしてノーベル賞か何かを受賞して賞金がゲットできるのではないかと今からわくわくしています。
 その一方で、この手法が〝The Numaduki method〟などと命名されたりすると、私の名前が永遠にトイレ関連で残り続けることになってしまいそれはちょっとな……とも思うので、その場合は残念ながら辞退することになりそうです。

 でも名前があることは広めるにおいて重要らしいので、どうしてもというなら命名されてもいいです。